会議やちょっとした打ち合わせ、雑談や飲み会……。リアルでの実施が難しくなったこれらのコミュニケーションをVR空間で実現できるツールをピックアップしてみました。
導入ハードルの比較的低そうなツールとして、「使用感がZoomなどの既存会議ツールに近い」「PCとの有線接続が不要なスタンドアローン型ヘッドセットで動く」「PCからでも会議自体の参加は可能」を基準に選んでいます。
「VR会議ツール」ってこんなもの!
まず、「VRで会議とかまったくイメージできない!」という方のために、いずれのツールにも共通するポイントをざっくりまとめると下記のような感じです。
- 参加者各自がVRヘッドセットを装着して、会議ツール(アプリ)にログインする
- 目の前にVR空間の会議室が現れるので、そこで会議をする
- VR空間内では、自分の代わりとなる「アバター」を使う
- 自分の口や手の動きがある程度アバターに反映される
- PCの画面は空間内に投影できる(Zoomの画面共有のようなイメージ)
続いて、各ツールの特徴やできることをご紹介していきます。
Horizon Workrooms
「Oculus」ブランドでVRヘッドセットを手がけるFacebookが作った新しいVR会議サービス。現在はベータ版が無料公開されています。
アバターは、自分の顔に似せて作成したものを使用。うなずく、振り向くなどの首の動きや手のジェスチャーがアバターに反映されます。
大きな特徴のひとつが、VR空間内のアバターの位置関係に合わせて声の聞こえ方調整されること。右隣にいるアバターの声は右から、左隣にいるアバターの声は左から聞こえることで、リアルな距離感を感じられるしくみになっています。
ただし、対応ヘッドセットは最新の「Oculus Quest2」に限られ、1世代前の初代「Oculus Quest」は使うことができません。PCやスマホからヘッドセットなしで入室することも可能ですが、その場合はVR空間内のスクリーンに2D映像が表示されるスタイルとなり、通常のWeb会議とあまり変わらない使用感になってしまいます。
対応ヘッドセット | Oculus Quest2 |
参加可能人数 | 16人 |
料金 | 無料(ベータ版) |
PCの画面共有 | 〇 |
ホワイトボード | 〇 |
PC・スマホからの参加 | 〇 |
Spatial
米国のVR企業が手がける会議ツール。参加人数上限が32人と多く、基本無料で利用可能。ホスト向けの管理ツールなどが使える有料の「Pro」プラン(25ドル/月)や、5人以上で20%オフになるチーム向けのプランも提供されています。
アカウント作成時に自撮り写真をアップロードすれば、それを元に自分そっくりのアバターが自動生成されます。PC画面の共有やホワイトボード機能のほか、空間内に浮き上がった付箋に図や文字を描いたり、3Dモデルのデータをアップロードして空間内に出現させたりといったことも可能。
機材は初代Oculus Questや、PCに有線で繋ぐタイプのヘッドセットにも対応。また、VRとは少し違うMRとよばれるタイプのヘッドセット「NrealLight 」「Microsoft Hololens 2 」からも利用が可能です。
ただし日本語化されていないサービスなので、設定や操作方法を英語で確認しなければならないのが少々ハードルになりそうです。
対応ヘッドセット | Oculus Quest/Quest 2/NrealLight /Microsoft Hololens 2 /その他PC接続型のVRヘッドセット |
参加可能人数 | 32人 |
料金 | 基本無料(有料プランあり) |
PCの画面共有 | 〇 |
ホワイトボード | 〇 |
PC・スマホからの参加 | 〇 |
vSpatial
先に紹介したSpatialと名前が似ていますが、別のサービスです。こちらも米国の会社が作っています。
料金表には「無料」のプランも掲載されていますが、条件をよく見ると「同じネットワークからの接続」「1対1の会議のみ」など、かなり限定された条件でしか使えない模様。そのため、通常の会議には月額9.99ドルの有料プランの加入が必要になりそうです。この場合は16人まで参加でき、ZoomやTeams、Slackなどとの連携が可能。ヘッドセットは、Oculus QuestやQuest 2に加えて、有線接続タイプのRiftsにも対応しています。
対応ヘッドセット | Oculus Quest/Quest 2/Oculus Rifts/RiftsS |
参加可能人数 | 16人 |
料金 | 9.99ドル/月 |
PCの画面共有 | 〇(Windows10のみ) |
ホワイトボード | × |
PC・スマホからの参加 | △(PCのみ) |
VIVE Sync
VRヘッドセット「VIVE」シリーズを作っているHTCによるVR会議サービス。VIVEシリーズの多くのヘッドセットに対応しています。ただし、VIVEシリーズのヘッドセットは全体的に高価で、スタンドアローン型の「VIVE Focus Plus」の場合は約10万円。上で紹介している3つのツールが対応しているOculus Quest2は3万7180円なので、機材導入ハードルは高くなります。
個人向けプランの提供はなく、プランは企業向けの「Enterprise」のみ。ユーザー1人あたり30ドル/月で、1つの会議室に30人まで参加できます。また、外部の個人ユーザーは、月180分までなら無料で企業ユーザーの会議に参加可能となっています。
対応ヘッドセット | VIVEシリーズ |
参加可能人数 | 30人 |
料金 | 1人30ドル/月(企業プラン) |
PCの画面共有 | ○ |
ホワイトボード | ○ |
PC・スマホからの参加 | ○ |
今回ピックアップした4サービスのなかでは、無料で基本機能を一通り使える「Horizon Workrooms」や「Spatial」は、比較的導入ハードルが低いのではないでしょうか。いずれにしても人数分のヘッドセットを確保することは必要になりますが、ハードさえ用意してしまえば、ランニングコストがかからないのは魅力的です。
Horizon Workroomsについてはまだベータ版ですが、これから機能が増えていきそうですし、今後、“VR会議ツール界のZoom”のような定番ツールになっていく可能性もあるかもしれません。