空間コンピューティング時代のユースケースを創出「STYLY Spatial Computing Lab」設立

株式会社STYLY、KDDI株式会社、J.フロント リテイリング株式会社は2024年4月24日、空間コンピューティング時代の事業創出を目的とした共創型オープンイノベーションラボ「STYLY Spatial Computing Lab(SSCL)」を発足した。

XRプラットフォーム「STYLY」を活用し、Apple Vision Pro向けのユースケース創出から社会実装まで、次世代ビジネスの創出に向けた研究開発を進めていく。また、戦略パートナーとして、テックカルチャーメディア『WIRED』日本版が参画する。

Apple Vision Proの登場で「空間を身にまとう」時代に

「STYLYでは長くXRを手がけてきたが、これまでは日常的に使えるデバイスがない状態だったこともあり、コンテンツ共有とクリエイター育成に注力してきた。Apple Vision Proという日常利用を想起させるようなデバイスが登場したことで、次世代ユースケースをパートナーと共にデザインし、新たなライフスタイルの確立をめざす段階に入った」」株式会社 STYLY 執行役員で、STYLY Spatial Computing Lab 所⻑をつとめる渡邊遼平氏はそう話す。

各社が強みを生かして協業

SSCLでは、4社がそれぞれの強みを生かして協業しながら、Apple Vision Proを活用したユースケースの創出を行っていく。

KDDIのパーソナル事業本部 サービス・商品本部 auスマートパス戦略部 ビジネス開発グループ グループリーダーの佐野氏は、通信キャリアとしての役割について言及した。空間コンピューティングではリアルタイムに大容量のデータ転送が不可欠となるため、高速かつ安定した通信ネットワークの実現に注力したいと述べた。また、パートナー企業との連携により、5Gの特性を生かした魅力的なユースケースの開発を目指すという。

J.フロントリテイリングの執行役常務 林直孝氏は、同社の400年に及ぶ百貨店の歴史を振り返りながら、空間コンピューティングにより新たな顧客体験を提供したいと語った。ECの普及によって失われつつある百貨店の価値を、没入感のあるコンテンツを通して再提案できると述べた。海外の顧客に日本の魅力を体感してもらうことで、インバウンド需要の取り込みにも活用できると展望を示した。

コンデナスト・ジャパンのWIRED副編集長の小谷氏は、テクノロジーの進化によって人々の生活がどう変化するかを予測し、伝えることがWIREDの役割だと述べた。同氏は、スマートフォンの普及がもたらした変化の大きさを踏まえ、空間コンピューティングにおいても同様の影響があると予見する。メディアとしてライフスタイルの変化を多角的に捉え、読者に提供していきたいという。

キラーアプリではなく、キラーライフスタイルをつくる

空間コンピューティングでどのような未来をつくっていきたいか」の問い大して渡邉氏は、「キラーアプリではなく、キラーライフスタイルを創出し、未来像を考えていきたい」と答える。

小谷氏は、介護施設で生活する認知症の人が、デバイス越しに自宅の部屋の空間にアクセスすることで生活しやすくしたり、部屋の空間とか 色覚障害のサポートに利用したりといったユースケースに期待を寄せる。

佐野氏は、時間や場所を超越できる特徴をいかし、スポーツなどの熱量のある体験でリアルとバーチャルの行き来できるようになる世界を描く。

林氏は、「今は日本を訪れる海外旅行客も多いので、そういった人たちに向けて日本を楽しめるものを作りたい」と話す。

SSCLでは、空間コンピューティング市場に関するリサーチレポートの提供や、コンテンツ創出に向けたワークショップの実施、ワークショップで立案された企画のプロトタイピング、Apple Vision Proの体験機会の創出、参画企業同士のコミュニティや情報発出などを実施していくという。

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