調理も配膳も全部ロボ!羽田イノベーションシティのロボットレストラン「AI_SCAPE」を体験

調理から配膳、下膳まですべてをロボットが行うレストラン「AI_SCAPE」(アイスケープ)が、4月に羽田にオープンした。

川崎重工業によるロボットのオープンイノベーションをめざす取り組みのひとつでもあるユニークな店舗は、「ロボットと人の共生」がコンセプト。実際に料理を注文し、ロボット達の仕事ぶりを体験してきた。

すべてが非接触、注文もアプリから

AI_SCAPEは、羽田空港に隣接した複合施設「羽田イノベーションシティ」内にある。店内にはロボットや利用客のサポート役として人間のスタッフがスタンバイしているものの、基本的に店内に入ってから出るまで人を介さずに完結するしくみだ。

まずはテーブルのQRコードを読み込んで、スマホで注文サイトを開く。

メニューは、「華麗なる22」セット(カレーライス)、「ROO玲瓏」セット(ミートソース麺)、「良縁三十」セット(パンとスープ)の3種類。

いずれも主食+おかず(ソース、スープ)+サラダ+ドリンクの組みあわせとなっている。ロボットでのオペレーションがしやすいように、あえて構成を揃えているようだ。

メニューは「心身と地球の健康」を考えて作られているとのことで、国産野菜や特別栽培米を使うなど素材にもこだわったものとなっている。

注文するセットを選び、ドリンクを選択したら、PayPayやクレジットカードで決済を完了。

料理はロボットが席まで運んでくれるが、ドリンクだけは自分で取りに行く必要がある。注文後の画面に表示されるQRコードをドリンクコーナーの読み取り機にかざすと、ロボットが注文したドリンクをカップに注いでくれる。

ロボット達が連携プレーで調理&配膳

奥のキッチンには、ロボット達の働く姿が。キッチン内で調理を担当する3台のロボットと、調理担当ロボから料理を受け取ってキッチンの出口まで運ぶ配膳ロボット、客席まで料理を運ぶホール担当の人型ロボットで構成されている。

注文サイトでは、調理中の様子をライブ映像で見ることも可能。キッチン全体を俯瞰しているので、客席からは見えない細かい動きまでしっかり観察できる。

配膳ロボットが左側の入り口からキッチン内に入り、3台の調理ロボットから料理を順に受け取った後、キッチンの外に出て定位置に停止。それをホール担当のロボットが客席まで届ける分業制となっている。

調理ロボットは、3台が主食、おかず、サラダで役割を分担。ライブ映像から見てとれるそれぞれの作業内容は下記のような感じだ。

主食担当(左)

・配膳ロボットの台にトレイを乗せる

・主食のカップをレンジに入れて温める

・レンジから出した主食をトレイに乗せる

おかず担当(中央)

・おかずのレトルトパックを湯煎する

・パックを開封用の機械を使って開封

・中身をカップに移す

・空袋をゴミ箱に捨てる

・カップをトレイに乗せる

サラダ担当(右)

・冷蔵庫からサラダを出してトレイに乗せる

・カラトリーの箱をトレイに乗せる

中央のロボット氏、作業が多くて大変そう。でもロボットだから、「私ばっかり大変な仕事をしている!サラダ担当ずるい!」みたいなことは言わないんだろうな…(ロボットがそれを言い出したらかなり怖い)

川崎重工業のロボット「Nyokkey」が料理を客席へ

すべてが揃ったトレイを乗せた配膳ロボットがキッチンの外にスタンバイすると、ホール担当のロボットがやってきてトレイを受け取っていく。

客席へ料理を届けるのは、ディスプレイの顔と2本の腕を備えた川崎重工業の「Nyokkey」。店内の通路には白い線が引かれており、これがロボットの移動ルートとなっている。

そして客席まで来ると、2本の手で器用にトレイをつかみ、笑顔でテーブルに乗せてくれる。

カップはいずれも同じサイズで、最初からカップに入った状態でロボットが扱う主食とサラダは蓋付き、ロボットが盛り付けをするおかずのカップは蓋なし。手前の箱はカラトリーのセットで、木製のスプーンと箸が入っていている。

ちなみにこのカラトリーも、国産ひのきの間伐材で作られたものに職人が漆をすり込む「摺り漆」という加工を施したこだわりの品。食事後は持ち帰ることができる。

今回は、ミートソース麺のセット「ROO玲瓏」を注文。麺は玄米使用のグルテンフリー麺。ミートソースはカンガルー肉を使い、白砂糖・小麦粉不使用、化学調味料無添加で作られているとのこと。

麺は一般的なパスタに比べるとかなり柔らかめ。カンガルー肉にとくに違和感はなく、食べやすいミートソースという印象。

食事を終えたら、注文サイトから退席を知らせるボタンを押して店を出る。なお、食べ終えた食器の回収もロボットが行っている。

飲食店の人手不足解消・接触回避の希望となるか

今回訪れたのはオープン直後のイベント開催日だったこともあり、人間のスタッフがたびたびサポートしながら稼働している状態だった。

人の手によるフォローを最小限に一連の工程を回すことができるようになれば、飲食店の人手不足解消や接触回避を実現しながら、ロボットレストランとしての体験価値も提供できる場となりそうだ。しばらくしたら再訪して、ロボット達の「成長」を見たいという気持ちになった。

また、健康志向・自然派志向のメニューとロボットという組み合わせも面白いと感じた。自然派料理の好きな人なら、メニューの内容だけでもかなり「刺さる」はずなので、先端技術との接点が薄い層がロボットに触れるきっかけにもなるかもしれない。

AI_SCAPE

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