完全無人店のメリットは?90秒で調理する上野駅ホームの「自販機そば」を食べてみた 

JR上野駅11・12番線ホームに2023年6月にオープンした無人店舗「セルフ駅そば 上野常磐ホーム店」。4種類のそばが自動調理販売機で提供されている。完全無人にはどんなメリットがあるのだろうか?実際に利用してみた。

自販機が1台置かれただけの「セルフ駅そば」

店舗は常磐線11・12番線ホームの東京寄りの端のほうに設置。一見、普通の店舗のように見えるが、看板には「セルフ」の文字が。

店内は立ち食いのカウンターのみで椅子席はなし。入り口には自販機の使い方や注意事項の書かれた看板も設置されている。とくに注意したいのは「店内に水の用意なし」「決済は交通系電子マネーのみ」の2点だろう。

店舗奥には米シリコンバレー発のフードテックベンチャー、Yo-Kai Expressが開発した自動調理自販機が1台設置されている。

メニューは「たぬきつねそば」が600円、「しょうが天そば」730円、「ちくわの磯辺天そば」680円、「柚子胡椒香る豚肉そば」780円の4種類。

隣の10・11番線ホームの有人立ち食いそば店はたぬきそばが420円、かき揚げそばが470円でああることを考えると割高感は否めない。

タッチパネルを操作してメニューを選び、SuicaやPASMOを使って決済をしたら、調理完了まで約90秒待つ。割り箸とレンゲは自販機下部のボックス内に用意されているものを自分で取り出すという、かつてのカップヌードル自販機を彷彿とさせる仕様になっている。

調理が完了すると取り出し口の扉が開き、プラスチック製の容器に入ったそばが登場。取り出して席へ移動する。

味は普通の「駅そば」かき揚げは少々残念

麺は柔らかめで、つゆはやや濃いめ。よくある駅そばという感じの味。かき揚げはつゆに浸った状態で出てくるので、ふやけて柔らかくなっている。パリパリ派には少々不満が残るかもしれない。

そのほかには、冷凍を加熱して調理する仕組みのためか、紅生姜がかなり細く頼りないことや、使い捨てのレンゲのサイズが小さく、少々使いづらいことが気になった。

カウンターはやや低めで、身長151cmの筆者のみぞおちくらいの高さ。背の低い人でもストレスなく食べられる一方で、身長の高い人は体を曲げなくてはならず少々食べづらいかもしれない。

早朝深夜に稼働できるのが強み、混雑時の待ち時間は難点

調理完了までの1分半は以外と長く感じた。有人の立ち食いそば店の場合、体感的にもう少し短時間で提供されることが多い印象だ。

さらに、実際にはここにタッチパネルを操作して注文する時間も加わる。操作時間を1人30秒として、もし調理待ちの人の後ろに2人並んでいれば、自分がそばを食べられる状態になるまでに7分前後かかることになる計算だ。

有人店舗のように忙しい時間帯だけ人を増やすという対応もできないので、自販機1台で稼働している限り、待っている人数に比例して待ち時間が長くなっていくことになる。実際、今回食事をしている間にも、店舗に入ろうとしたものの自販機に人が並んでいるのを見て引き返していった人がいた。

一方で、利用者の少ない早朝や深夜でも稼働させておけるのはメリットだろう。この店舗も6:00〜23:00と、駅構内の店舗としては営業時間が長めになっている。

駅構内の他の飲食店はすでに閉まっているものの、帰宅するまで何も食べずに帰るのはつらい…という、夜遅くに帰宅する中距離通勤者にとっては救世主になってくれそうだ。

そう考えると、ひっきりなしに人が利用する店舗より、一定のニーズはあるものの人間のスタッフが常駐して対応するのはコスト的に厳しい場所や時間帯で強みを発揮してくれるものなのかもしれない。

また、利用者の多い場所でも稼働台数を増やして対応することができれば、待ち時間の問題はある程度解消できるかもしれない。

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