9月16日〜18日に日本科学未来館で開催された「メタバースの境界線-降らない雨を感じている」。“リアルな会場に傘をさして入場し、メタバース空間に降り注ぐ雨を感じるという、少々不思議な体験型インスタレーションだ。実際に体験した様子をレポートする。
このイベントは、臨海副都心エリアで開催中の「ARTBAY TOKYO アートフェスティバル2023~CIRCULATION~」内の企画として展開。
まず、入り口でスマホと傘を手渡される。スマホにはメタバースプラットフォーム「cluster」で作られた会場が表示されている。傘を肩に乗せるように持ち、真っ暗な会場内へ。
会場の奥には大きなスクリーンが表示され、そこにclusterの画面と、参加者のアバターが表示されている。参加者は手元のスマホからアバターを操作でき、飛び跳ねたりリアクションをしたりといった動きが、リアルタイムで反映される。
そして、メタバース側であるclusterの画面に雨が降り始め、同時に体験者が持っている傘に雨粒が当たったような振動が起きる。
リアル空間では当然、雨は降っていないが、傘の振動と雨音、メタバース空間に降る雨、そして双方で同期されるアバターの動きによって、リアル空間でも「雨」を体感できるというものだ。
傘に当たる雨粒の振動がリアルで、室内が真っ暗なこともあり、思った以上に「雨」を感じられた。「リアルとメタバースの融合」と聞いてもっと複雑なしくみを想像していたが、意外とシンプルで、人の感覚は意外と簡単に“だまされる”ものなのだと思った。
ただし、今回の体験はアバターを操作するためにスマホの画面を見る必要があり、そこで「現実」に引き戻されてしまう感じもあった。体験者がセンサーを装着する等の方法で体の動きをそのままアバターに反映できれば、よりリアルな体験ができるかもしれない。