外出先でもでも大画面で作業したい。でも、持ち歩く機材はコンパクトなほうがいい。
そんなワガママを叶えるべく、ARグラス「XREAL Air(旧Nreal Air)」と、デバイスを無線接続するための「XREAL Beam」を使い、iPadの画面を投影して仕事をしてみた。
XREAL AirとXREAL Beamでできることや、表示可能な画面サイズ、必要な設定や準備について紹介しよう。
目次
XREAL Beamは何ができる?
XREAL Airは、眼鏡型のデバイス越しに仮想ディスプレイを投影できるARグラス。そしてXREAL Beamは、スマホなどの外部デバイスの画面をXREAL Airにミラーリングするためのリモコンデバイスとなる。
XREAL AirとXREAL Beamの間は有線でつなぐ必要があるものの、投影元のデバイスとは無線で接続できるので、Beam本体をポケットなどに入れてしまえば比較的身軽に使うことができる。
XREAL Air本体は79g、XREAL Beamは153gなので、ケースやケーブルなどを含めてもトータルで360g程度。この軽さで大画面環境を持ち歩けるなら、出先での仕事にも活用できるのではないだろうか。
ということで、XREAL AirとXREAL Beamを使い、iPadの画面を投影して仕事をできるのか検証してみた。
XREAL Beamをデバイスに接続
まずは、XREAL Airのつる部分にあるType-Cポートと、XREAL Beam側のグラス接続用ポートを付属のケーブルで接続。XREAL Beamの電源を入れるとグラス内に設定画面が表示されるので、接続先のWi-Fiの選択などの初期設定を行う。
あとは、iPadをXREAL Beamの接続先と同じWi-Fiにつないだ状態で、コントロールセンターの「画面ミラーリング」から「XREAL BEAM〜」で始まる接続先を選択するだけで画面が投影されるようになる。
ディスプレイの表示方法は、頭の動きにスクリーンが追従する「ブレ補正」、スクリーンが空中に固定される「3DoF」、ディスプレイを縮小してサイドに表示する「サイドスクリーン」の3種類のモードから選択できる。表示サイズや表示位置の調整も可能だ。いずれもXREAL Beamのサイドボタンを使って操作する。
AppleデバイスならAirPlay、AndroidデバイスならMiracastを使ってミラーリングするので、これらに対応している端末であれば基本的に投影が可能。また、Miracast非対応のスマホやゲーム機などの場合は有線でつなぐことができる。
iPadで作業するのに最適な表示サイズは?
実際の使用時のサイズ感を分かりやすくするために、カラオケボックスの大型ディスプレイに重ねるようにiPadの画面をグラス越しに投影してみた。
筆者が座っている場所から表示位置までの距離は1.3mくらい。Padの画面全体が切れることのないサイズに調整すると、16:9の47インチディスプレイと比較して高さが一回り小さいくらいのサイズで表示される。アスペクト比の違いがあるため単純な比較はできないが、4:3のディスプレイサイズでいえば38インチ程度といったところだ。
表示サイズは投影場所までの距離によって変わり、距離が長いほど、つまり広い空間で使用したときほど大きく表示することが可能になる。
あくまでも体感値だが、リビングなどの広めの空間で3m先に投影した場合で96インチ程度、デスク上で目の前60cmの位置に表示した場合は18インチ程度といったところだ。
表示サイズの公称値は「4m先に最大330インチ」だが、作業で使う場合にはそこまでの大画面は必要ない。先述の「1.3m先に38インチ程度で投影」「60cm先に18インチ程度で投影」あたりが使い勝手のよいサイズだと感じた。
どちらのサイズの場合も視認性に大きな問題はなく、文字入力などのちょっとした作業であればストレスなく行える。
XREAL+iPadで作業するときに必要なアイテム&設定
ただし、単にiPadの画面を投影しただけでは「視聴専用」の環境にしかならないので、ハードウエアの入力デバイスをBluetoothで接続して環境を整える必要がある。実際に試してみて重要だと感じたアイテムの選び方とおすすめの設定を紹介しよう。
外付けキーボードは必須!手元を見ずに打てるものを
まず、グラスを装着した状態で文字入力をするので、外付けのハードウェアキーボードは必須。基本的に手元を見ずにタイピングすることになるので、打鍵感のしっかりしたものを選ぶのがおすすめだ。
携帯用のキーボードにはサイズを小さくするために一部のキーを省略したり、配列が変則になっているものもあるが、その手の製品はタイプミスが起きやすくなる。できるだけノーマルなキーボードに近いものを使うほうがストレスが少ないだろう。
マウスよりトラックボールのほうが快適
キーボードに加え、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイスも用意したい。ソファなどの柔らかい場所で操作する場合を考えると、マウスよりトラックボールのほうが適していると感じた。
ソファの背もたれに寄りかかった状態で、ひざの上にキーボード、横のソファの上にトラックボールを置き、リラックスした姿勢で作業できる。
通常のマウスを選ぶなら、使用場所でうまく動かなかった場合に備えてマウスパッドを用意しておくと安心だろう。
「ステージマネージャ」を活用すべし!
XREAL Beamを使った接続の場合、残念ながら複数のウィンドウを同時に並べて表示させることはできない。ただし、M1/M2チップ搭載のiPadであれば、その難点をカバーする手段として「ステージマネージャ」を利用できる。
ステージマネージャを有効にすると、中央に現在使用しているアプリのウィンドウ、サイドに起動中の他のアプリのウィンドウが小さく表示され、簡単に切り替えできるようになる。
通常のiPad使用時にステージマネージャを有効にすると作業画面が小さくなって少々使いづらいが、XREAL Airの大画面投影時であれば無問題。複数のアプリを行き来する場合の効率が大きく向上する。
最大のハードルは「周囲の目」かもしれない
「どこでも大画面の作業環境を確保できる」「機材が軽量」というメリットを考えると、XREAL Air+XREAL BeamにiPadという組み合わせは悪くない選択だと感じた。
では、実際に出先での作業に使うかと考えると、そこには別の問題が存在する。XREAL Airの外観は、一見すると濃い黒色のサングラス。正直なところ、けっこう怪しげだ。室内でかけていると周囲の人に威圧感を与えてしまうかもしれない。
もちろん、よく見れば普通のサングラスとは構造が異なるし、使用中はグラスの奥が四角く光って見えるので、何かしらの画面を投影していることも想像がつく。「画面を投影できるグラス」の存在を知っている人であれば、何のために装着しているのかを理解できるだろう。
しかし残念なことに、この種のデバイスの認知度はまだ高いとはいえない。存在が広く認知され、それが「一般的なアイテム」として受け入れられるようになれば、おそらく問題なく使えるようになるはずだ。
たとえば、スマホが普及しはじめた時代に、「電車の中でスマホの画面を見つめている人ばかりで不気味だ」といった声があったが、今は良くも悪くもそれが当然の光景となった。
また、ワイヤレスイヤホンが出はじめたばかりの頃には、歩きながらイヤホンで通話をする人に訝しげな視線が向けられることもあった。でも、今はすれ違った多くの人がそれが通話中であることを認識できるだろう。
そう考えると、カフェなどでグラスをかけて作業することが世間に受け入れられるようになるのも時間の問題かもしれない。それまでは、ビジネスホテルやセミクローズドなコワーキングスペースなど、問題なく使えそうな場所を選びながら活用していきたい。