【イベントレポ】デザイナーの収益を複線化!NFT×メタバースを活用したファッション展示「Sizeless Twin」がめざすもの

メタバースやNFTが注目される一方で、言葉ばかりが一人歩きしている感も否めない今日この頃。実際にどう活用していくかのヒントになりそうなのが、ファッション業界の展示にメタバースやNFTを使うことで、クリエイターの収益源の確保をめざすスタートバーン株式会社の取り組みだ。

この記事では、3月14日に開催された「経済産業省 令和3年度事業『展示会等のイベント産業の高度化事業(実証事業)』採択企業の成果発表会」より、同社の発表「~Sizeless Twin~ファッション産業におけるNFT/メタバースを活用した展示の高度化事業」の内容を紹介。さらに、別日にて現地会場に足を運んだ展示イベントの様子もレポートする。

NFT活用でクリエイターの収益を複線化

スタートバーン株式会社は、アートとブロックチェーンに関する事業を手がける東京大学発のスタートアップ。これまでには、アート作品向けのICタグ付きブロックチェーン証明書「Startrail」などを手がけてきた。

登壇したスタートバーン株式会社の渡辺有紗氏

従来のファッション展示は、実際の服の売り上げのみがブランドやクリエイターの収入となり、収益の複線化が困難な点が課題だったという。

同社が3月4日~13日に実施した展示「Sizeless Twin」では、実施の製品(ユニークピース)に加えて、それを3Dモデル化したものを100エディション生成し、NFTとして販売。さらに、その3Dモデルを元にした合成写真NFTの販売も行うことで収益の複線化を試みた。

また、それらのNFTの二次流通以降の収益についても、クリエイターに還元されるしくみとしている。

ユニークピース、メタバースNFT、合成写真NFTの3つで収益を複線化

リアルとメタバースで同時開催

展示には5つのブランドが参画。リアル会場での作品展示に加えて、現実の展示と同じ空間を再現したメタバース会場も用意された。展示内にはNFTを購入できるリンクを表示し、海外や遠方で物理的に来場できない人も楽しめるものとしている。

さらに、リアル会場には、電通ラボの制作によるバーチャル試着システムを設置。AIが来場者のアバターを生成し、そこに3DCG化された洋服を重ねることで試着体験ができるものだ。

リアル会場での作品展示だけでなく、バーチャル試着やメタバース会場での展示も実施

この展示では、「現実空間のほかに、もうひとつの人や物が存在する『デジタルツイン』において、私たちは何を思うのかを目に見える形で表している」という。

たとえば、メタバース空間内でアバターが着用する衣類にはサイズという概念はない。それは一見、“解放”のようにも思えるが、果たして人はそこに実像を見いだすことができるのか・・・。そのようなまだ答えが出ていない課題について考えるきっかけ作りとしての意味も込められているのだそうだ。

アバター生成システムを体験!実際の展示に行ってみた

馬喰町のギャラリーで行われた展示にも足を運んでみた。展示は近隣2か所に分かれて行われていたので、まずは試着システムが設置されている会場へ。

展示は馬喰町のギャラリー「PARCEL」で行われた

システムは、縦長の大型モニターとカメラ、操作を行うタッチデバイスで構成。まずはタッチデバイスから自分の名前や好きな言葉などを入力。すると、AIによってオリジナルのアバターが生成される。

全体の写真を撮っていなかったので、こちらはプレスリリースから

アバターは、銀色の体に幾何学模様の入った不思議な姿。さらにここに、今回の展示に参画しているブランドの服を着せることができる。

アバターの画像は、試着後にタッチデバイスに表示されるQRコードからNFTとして購入することも可能となっていた。なお、購入できるのは、衣装を着ていないアバターに背景を組み合わせたスクエアの画像となるようだ。

続いてもうひとつの会場へ。本当に会場? 解体中のビルでしょ・・・? という感じのインパクトのある外観だ。後から調べたところによると、この「まるかビル」は築70年のビルを全面改装したギャラリーとのこと。

衝撃の外観。展示の看板が出ていなかったら絶対にたどり着けない

こちらの会場では実作品の展示が行われていた。虹色の巨大なドレスや今までに見たことのない形状の靴など、ファッションに疎い筆者が見ても「ただ者ではない」気迫が伝わってくる作品が並んでいた。

実作品の迫力は圧巻だった

クリエイターの手がける一点物の作品は、多くの人にとって「遠い存在」だろう。しかし、NFTの3Dモデルとしてなら、それを手元に置ける可能性も生まれてくる。

今回の展示のような取り組みは、収益の複線化でクリエイターの創作活動を支えるとともに、ファッションやアートに関心を持つ人との距離を縮める役目も果たすのかもしれない。

Pocket