実空間にPC画面などのコンテンツを表示できる「AR」が、いよいよ実用レベルになってきた。ARグラスの代表的ブランドともいえるXREALから2023年11月に発売された「XREAL Air 2 Pro」は、装着感、スペック共に仕事にも十分使えそうなレベルに進化している。初代モデルから買い換えて感じたメリットをレビューする。
まず、XREAL製品のラインナップについて整理しておこう。初代モデルの「XREAL Air」(発売時の名称は「Nreal Air」)は2022年に発売。当初は用途が限られていたものの、その後、外部機器と接続するためのアダプターやリモコンデバイスが発売されたり、Macと接続するためのアプリが提供されたりすることで、拡張性を高めていった。
そして、2023年9月に新モデルの「XREAL Air 2」が、11月にその上位モデルにあたる「XREAL Air 2 Pro」が発売された。
目次
軽量化&安定感向上で着け心地が大幅改善
初代XREAL AirとXREAL Air 2 Proの外観に大きな違いはない。写真だけを見ると「買い換えの必要があるの?」という印象を受けるかもしれないが、実際にかけてみると装着感がかなり向上していることがわかる。
まず、本体重量が79g(初代)から75g(Air 2 Pro)に軽量化。ちなみに、XREAL Air 2は72gとさらに軽い。
さらに、前後の重量配分が1:1と均等になったことで、装着時の安定感も向上している。初代モデルの場合、グラスの上部が顔側に傾いて映像が見づらくなるのが難点だったが、新モデルは顔とグラスのすき間がきちんと確保されるようになっている。
ノーズパッドは平たいゴムから、中に空気の入ったふっくらした厚みのある構造に変わった。これもフィット感の向上に一役買っていると感じる。
また、ツルの先端部分の柔軟性も向上したので、顔に合わせた調整がしやすくなっている。
このほかに、明るさが400ニトから500ニトにアップしたことや、音響システムの向上なども初代モデルからの改善点だ。
今回、筆者がAir 2 Proに乗り換えた最大の理由は、「初代Airで感じていた装着感に対する不満」が見事に解消されていたからだ。
XREAL Airシリーズには、Macと接続して最大3画面を投影できるバーチャルデスクトップアプリが提供されている。PCの外部ディスプレイ代わりに使うことができるのでビジネスホテルで作業したい場合などに重宝しているが、その場合、比較的長い時間使うことになるため装着感が非常に重要になる。先代モデルは使用中にどうしてもグラスが傾いてきてしまい、それが集中力の妨げになっていた。
作業用ディスプレイとして使う以上、できるだけ「自分の目で物理的な画面を見た状態」に近い使用感がほしい。そして、物理ディスプレイは、「使っているうちに傾いてくる」ことは基本的にない。些細なことのようにも思える「ズレたグラスを調整する作業」が不要になるだけで実用度がグッと上がったと感じている。
Proの調光機能は移動中の利用に重宝
そして、今回の買い換えの決定打となったもうひとつのポイントが、3段階の調光機能だ。作業用ディスプレイとして使う場合に、これはかなり重宝する。
サイドボタンを押すたびに、グラスの明るさ(濃さ)が3段階に変化する。
もっとも暗い100%にした場合、周囲がほぼ見えない状態になる。本体がサングラス状なのでVRグラスのような完全な没入感はないものの、暗い空間にコンテンツだけがくっきりと浮かび上がるので、映画などを集中して見たいときにはこのモードがよいだろう。
中間の35%は、濃い目のサングラスをかけたくらいの状態。ちなみに調光機能のない初代XREAL AirやXREAL Air 2はこの暗さで固定されている。
最も明るい「0%」は、薄めの色つきグラスをかけたような見え方で、周囲の状況を確認しながらAR表示されるコンテンツを見たい場合に役立つ。
PCと接続して作業するときに重宝しているのが、この0%のモードだ。仕事中はPCの画面だけに集中していればよいとは限らない。電話がかかってくることもあるし、誰かに話しかけられたり宅配便が届いたりする場合もある。グラスの中の世界に完全に入り込むのではなく、周囲の状況を確認しやすい状態にしておくことが逆に安心感につながる。
また、調光を0%にした状態では外側から見たレンズの色も薄くなるので、周囲に与える威圧感が薄く、「今、話しかけていいのかな?」と不安にさせてしまうリスクも薄れそうだ。
キーボードを打つ手元をグラス越しに確認できる点もメリットだろう。タッチタイピングが完璧でなくても、適度に「チラ見」しながら文字入力が可能だ。
ケースや付属品も地味に改良
このほかには、付属品にも細かい改良が加えられている。収納ケースはジッパーで開閉する構造から、パカッと開閉するタイプに変更され、より簡単に開閉できるようになった。微妙に邪魔だった内部の仕切りもなくなっている。
ケースの底面が平らになり、デスクなどに置いたときの安定感が向上したのも、地味に便利な改善点だ。
レンズの外側に装着することで周囲の光を遮断できるライトシールドは、味気ないプラスチックの板からサングラス風のデザインに進化。(Air 2 Proの場合は、調光機能を使えばライトシールドのあまりなさそうだが)
インサートレンズ用のフレームも形状が変更され、レンズ上部をフレームが覆うような構造になった。レンズに力が加わったときの強度は向上していそうだ。なお、初代モデルのフレームで作ったインサートレンズをXREAL Air 2 / Air 2 Proで使うこともできる。
XREAL Air 2 Pro、XREAL Air 2 、XREAL Airは結局どれを選べばいいのか?
現在購入可能なXREAL Airシリーズは、普及モデルの「XREAL Air 2」、調光機能がついた上位モデルの「XREAL Air 2 Pro」、そして、引き続き販売されている初代モデルの「XREAL Air」の3種類。
このうち、XREAL Air 2とXREAL Air 2 Proの違いは調光機能のみとなり、重量配分やノーズパッドの改善など、本記事で触れた装着感に関する改良点はXREAL Air 2にも採用されている。調光機能を必要としない場合はXREAL Air 2でも十分だろう。
初代モデルは先述のとおり、新モデルと比較すると装着感は今ひとつだが、XREAL Air 2より5000円ほど安く購入できる。「とりあえずARグラスがどんなものか体験してみたい」「購入しても頻繁に使うかわからない」という場合は、こちらを選ぶのもひとつの選択肢だ。
XREAL Air 2 Pro | XREAL Air 2 | XREAL Air | |
---|---|---|---|
重さ | 75g | 72g | 79g |
ディスプレイ | 0.55インチMicro-OLED | 0.55インチMicro-OLED | 0.68インチMicro-OLED |
明るさ | 500Nits | 500Nits | 400Nits |
視野角 | 46° | 46° | 46° |
PPD(Pixel per degree) | 49 | 49 | 49 |
リフレッシュレート | 120Hz | 120Hz | 120Hz |
その他の機能 | 三つの調光レベル | ||
価格 | 61,980円 | 54,980円 | 49,980円 |
こんな人におすすめ | ・調光機能を使いたい ・快適な装着感を求めている | ・快適な装着感を求めている | ・予算を抑えてARグラスを試したい |
そして、1月8日(日本時間)には、開発者向けの「XREAL Air 2 Ultra」も発表された。こちらは6DoF(体の前後・左右の移動にも対応した空間)に対応している。一般ユーザーがどの程度の恩恵を受けられるのかは未知数だが、XREAL製品の進化はまだまだ続きそうだ。