地方の中小企業が先端技術を導入したいと考えたときに、まず課題となるのがコストだろう。株式会社リモデルパートナーズが実証実験として取り組んだ美濃焼のバーチャル展示会では、iPhoneと既成のツールを活用することで、3Dモデルの制作コストを従来の1/5以下に削減した。
この記事では、3月14日に開催された「経済産業省 令和3年度事業『展示会等のイベント産業の高度化事業(実証事業)』採択企業の成果発表会」より、同社の発表「VR(仮想現実)とAR(拡張現実)を連動させた新たなバーチャル展示会によるリアル商材の流通」の内容を紹介する。
美濃焼をバーチャル展示、ARで実寸表示
XRアプリ開発やコンテンツ制作を手がける同社は、岐阜県の伝統産業である美濃焼のバーチャル展示会を2月28日から3月10日に開催した。
展示会場にはPCブラウザからアクセスが可能。ヘッドマウントディスプレイや専用のアプリは不要で体験できる仕様とした。
会場内のブースに商品が並び、商品をクリックすると静止画の写真やテキストの商品情報が表示される。
さらに、QRコードをスマホで読み込むと、実際の商品を3D化したものをARで実物大表示してサイズを確認したり、手持ちの食器と一緒にテーブルに並べてコーディネートの確認をしたりできる。
出展者の反応は上々、ただし経営層からは販売実績を求める声も
今回の展示では、商品登録や会場の机や棚への商品配置、看板や動画、店内ポスターなどの設定を出展者側が簡単に行えるようにしている。これには、管理機能を提供することで出展者の参加意欲の向上をうながす目的があったという。
これに対して、現場の販売担当者からは「個性が出せて面白い」「全体のバランスを見ながら総合的に配置できる」といった好意的な評価が得られた一方で、経営層からは「顧客獲得率や購買率などのメリットが出てこないと出展者としての販売意欲は出てこない」というシビアな声もあったという。
iPhoneを活用し3Dモデルの制作コストを削減
AR表示のための3Dモデル作成にあたっては、iPhoneと市販のスキャナーツールを活用。iPhoneで撮影した写真をMacに転送し、iPhoneの写真からARに最適化された3Dモデルを生成する「Object Capture」を使って制作を行った。
この方法を採用することで、現物の撮影・採寸後に個別の3DCGを制作する従来の方法に比べて制作プロセスを大幅に短縮でき、コストは1/5以下に削減できた。
ただし、「シーサーの置物」のように特徴点の多いものがほぼ完璧に3Dデータ化できたのに対して、白い商品や光沢が多い商品は読み取りが困難なケースもあった。
今後は、バイヤーに対する認知向上や、他の産地との共同開催による出展数の増加、3Dモデルの質感表現の改善、地方企業に対する制作支援体制の構築などを課題として取り組んでいくという。